風花がやってきた。
「犬猫ものがたり」企画に際して
先進国のなかでも日本がペットの放棄、処分が悲劇的に多い現実を知ってほしい、そして、一匹でも多くの犬猫に里親が見つかりますように、との願いを込めて、このイベントを企画しました。そのきっかけとなったのが風花との出会いでした。
里親になるまで
犬を飼うことを漠然と考えていた時期のことでした。出張で行った宝塚の駅前で「里親募集の犬猫たち」に出会いました。関西を中心として活動する市民団体を通じて初めて、日本では40万匹近くもの犬猫が不当に処分されている現実と、捨てられた犬猫の新しい家族を見つけるボランティア運動を知りました。こんなにたくさんの犬猫が里親を探しているのなら、次に犬を飼う時は保護犬を引き取ろう、と思いました。
さっそく問合せをしてみると懇切なお返事が届き、アフターケアを考えると東京周辺で同じようなボランティア団体さんを見つけるようにとご助言くださりました。そこでしばらく探しているとCATNAPさんに出会いました。
山中に捨てられていた「使用済」の犬
▲(2008.5)保健所から引き取られて間もなく。一時預かりの斉藤さん宅で。 千葉県の山中にダンボールに入って数匹と放棄されていたという風花は、ブリーダーによって「使用済」として捨てられた繁殖犬で、その後、毒ガス死を待つばかりの保健所で3ヶ月も垂れ流し状態に置かれていたといいます。推定年齢10歳。カイセンなど病気もあり、預かりさんのところで毎日シャンプーしても泡立たなかったというくらい黄茶けて汚れていました。
おしっこやけがひどく尻尾とお腹の毛もほとんどない。 飼主の適正を診断されるため、千葉まで「御見合い」へ行った時は全く自信がありませんでした。だっこしても骨だらけで壊れそうに弱々しく、毛はフケだらけ、体臭は鼻を突くほどで、目脂もひどい。トイレもできないし、お散歩もせずに狭いケージに閉じ込められてくるくる回る旋回癖がひどくて、正直言いますと、犬を飼いなれていない私が責任もって引き取れる自信は全然ありませんでした。トイレや散歩のしつけから1日4回の目薬の点眼など…かなりの世話をする覚悟が必要でした。
絆を築く。気付きの日々
▲(2008.6)我が家に来て。やせっぽちで下半身の毛が薄いのでジーンズをはかせていた頃。 しかし、いざ引き取ってからは、私が教わることだらけでした。劣悪な環境でだいぶ弱っていましたが、驚いたことにまだ人や他の犬を信頼する気持ちを失ってはいない無邪気さに心打たれました。子犬ではなくても懐いてくれるものです。人の言うことに耳を傾けて一生懸命理解しようとします。警戒心なく御腹を出して仰向けに熟睡しているときは何の危険も感じていなくて幸せそうです。こんなに信用されたら私も信用するしかありません。徐々にトイレも覚え、お散歩も好きになりました。
(2008.6)避妊手術を終えて。取り除いた子宮を見せてくれながらお医者さん曰く4月頃まで生んでいたそう。大変だったね、風花ちゃん。 一年経つと、もう生えないかもと言われた尻尾にも長い毛が生えました。全身シルクのようにフサフサです。健康診断結果は全て異常なし。目だけが治らず、数種類の目薬で手入れが必要ですが、大変とも思わなくなりました。ちょっとでも居ないと淋しくなるような大切な家族の一員です。
▲(2009.5)散歩が大好きになりました。 ときどきおめかしをして出かけたり、日向ぼっこしながら店番をしたり・・・。毎日、好奇心いっぱい、飼主に人間の我侭を諭しながら(!)、元気に暮らしています。 90歳になる鬱気味だった祖母にも笑顔が増えました。アニマルセラピーは薬より効きます。風花に沢山のことを教わりながら私たちの毎日も華やいで、愛情のある処にはアリガトウの気持ちも育つのですね。一匹の犬が醸しだしてくれる和やかな生活空間に感謝しています。
YHIギャラリーコーディネーター
山梨牧子